同性愛反対キャンペーンと私の大切な人

同性愛に対する反対デモが、本日渋谷区駅前で行われたとの記事を読んだ。日の丸を掲げ、声高に「同性愛条例絶対反対」と主張する人々の画像を見て、一番に思い出したのが私の友人のことだった。

 

友人はトランスジェンダーFTM(Female to Male)、つまり女性から男性へと性転換している。学生時代の大切な友人であり、一度は私が本気で好きになった人だ。

 
彼のカミングアウトを聞いたのは、出会ってから半年以上後のことだった。それまで私は、彼をずっと(適切な表現か分からないが)一般男性だと思っていた。彼から、以前は女性だったとのカミンングアウトを受けて、しばらくの間私の脳は思考停止していたのを覚えている。
何の冗談だろう、私をからかって面白がろうと考えているのかと、はじめは訝しがっていた。逆にからかってやろうと、私はいろいろと質問した。
「どうして胸がないの?」
「どうしてヒゲが生えてるの?」
「皆で温泉に行ったときはどうしたの?」
どの質問にも、彼はすらすらと当たり前のように答えてくる。胸の手術の痕も見せてくれた。
そこまできて、ようやく私はその告白は事実だと理解できた。
 
はじめ私は、彼がFTMであるという事実を信じられなかった。それは決して目を背けたかったからではない。当時の私からすれば、FTMという"特別な存在"が自身の身近なところにいるとは夢にも思わなかったからだ。
 
時は経ち、その後の人生でもLGBTの人に出会う機会は何度かあった。しかし数年前の私とは違って、なんの違和感もなく、一切の特別視もせず、ごく普通に接している。
私がそのようになれたのは、先に登場した彼の存在が非常に大きい。あの時、彼と出会っていなければ、彼の告白を聞いていなければ、今の私はどういった考えをもっていたのだろうか。それを考えると少し怖くなる。
 
 
今回の反同性愛デモで私が一番驚いたのは、実際にデモを目撃した人々の声だ。Twitterではデモに対して、「時代錯誤だ」、「バカみたい」と多くの批判の声があげられている。その情景に、私は胸を打たれた(決して誇張ではない)。
彼らは独自の考えをもとに、"LGBTを反対するのは間違っている"とSNSを通じて意思表明している。彼らにとってLGBTとは、決して特別なことではなく、日常にある当たり前の風景なのだと思う。Twitterの主な利用者は10代半ばから20代後半の若者だ。そう考えると、日本の未来は明るいと感じた。
 
 
彼と出会ってから数年後、私は彼に「(恋愛対象として)好きだ」と自身の想いを伝えた。結局は玉砕したが、彼とは今も仲の良い友人としてお付き合いしている。彼は私の人生観を変えてくれた恩人であり、今も変わらず私にとって大切な存在だ。
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